Dr Jin-Oh Choi
Cardiologist/ Professor, Department of Internal Medicine, Sungkyunkwan University School of Medicine, Seoul, Korea
 

韓国の臨床症例:心不全の鑑別診断に有用なNT-proBNP高値

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CTL-ProfCho-Case-Study-Oct-Asset-1

58歳男性

主な徴候および症状

労作制限を伴う呼吸困難

既往歴

10年前に拡張型心筋症と診断。
8年前にICDを挿入し、ガイドラインに基づく薬物治療(GDMT)により症状が改善した。
最近、労作性呼吸困難が悪化し、LVEFが持続的に低下している。

診察

血圧 94/60 mmHg
心拍数 86/min
第3心音(S3) (+)
頸動脈圧(JVP)上昇

臨床検査結果

電解質:Na 138 mmol/L
K 4.0 mmol/L
BUN 13.9 mg/dL
Cr 0.7 mg/dL
Hb 16.6 g/dL
NT-proBNP 3120 pg/mL

経胸壁心エコー(TTE)およびMRI画像

エコーCGで、LVEF 17%の重度の全心室壁運動低下、軽度から中等度のMR
 

冠動脈造影(CAG)

CAG像正常、ICDリードは所定の位置にあり
 

胸部X線(CXR)

 
胸部PA像で心拡大および
肺うっ血あり、ICDは所定の位置にあり
 

心電図 (ECG)

ECGでは正常洞調律、両心房拡大、RBBB、VPCを示す所見
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NT-proBNP in advanced heart failure due to dilated cardiomyopathy

What is the management of this case ?

診断

 

患者は拡張型心筋症による進行性心不全と診断され、投薬をACE阻害薬からサクビトリル/バルサルタン100 mg 1日2回に切り替え、イバブラジンが追加されました。

 

投薬調整後、患者のNT-proBNP値は1443 pg/mLに低下し、症状のわずかな改善が認められました。

 

しかし、18ヵ月間の管理後に再び症状が悪化し、NT-proBNP値は最大3592 pg/mLまで持続的に上昇しました。不整脈、感染、貧血または甲状腺機能障害の所見は認められませんでした。

 

患者はその他の悪化要因である高塩分食の摂取、薬剤の飲み忘れまたはNSAIDなどの投薬について否定しました。心不全の悪化により、6ヵ月前からの2度目の入院となりました。

 

患者は現時点では、LVADや心臓移植などの心不全手術が適応となれば、すぐに心不全の高度治療センターに紹介することになっています。

著者の見解

  • 最新のガイドラインに従った内科的治療では症状は改善せず、NT-proBNP値が3000 pg/mL超と高値が続いているため、患者はLVADや心臓移植などの外科的心不全治療の候補となる可能性があります。  

  • 患者には右心カテーテル検査や最大酸素摂取量を測定する運動負荷試験などの検査を受けてもらい、LVAD手術や心臓移植の適応対象であるかを確定します。

  1. Domingo A. Pascual-Figal. et al, European Hear Journal, Volume 29, Issue 8, April 2008, Pages 1011-1018
CTL-ProfCho-Case-Study-Oct-Asset-1

61歳女性

主な徴候および症状

最近悪化した労作時胸痛を伴う労作性呼吸困難

既往歴

1年前に労作性呼吸困難(fc 2)
最近、NYHA IIIに悪化(労作時胸痛を伴う)
軽度の求心性LVH
LV機能正常
RV機能正常
診断歴に声門下癌があるが、現時点で再発の所見なし
詳細な検査を行うよう提案された

診察

血圧 91/63 mmHg
心拍数 63/min
脛骨前面の圧痕浮腫 (+/+)

臨床検査結果

Hb 14.7 g/dL
電解質:Na 143 mmol/L
K 3.9 mmol/L
BUN 16 mg/dL
Cr 1.19 mg/dL
NT-proBNP 4430 pg/mL
TnI 0.059 ng/mL
血清中の遊離カッパ軽鎖 474 mg/L
血清中の遊離ラムダ軽鎖 6.18 mg/L

骨髄生検

単クローン性形質細胞増殖とアミロイド沈着を伴う正形成骨髄

形質細胞性骨髄腫(形質細胞:15~20%)

骨髄にアミロイド沈着を伴う原発性アミロイドーシス

胸部X線(CXR)

 
胸部PA像で心拡大あり、有意な所見なし
 

冠動脈造影(CAG)


CAG像正常、LVEDPが18 mmHgと上昇
 

経胸壁心エコー(TTE)

LVEF 63%で正常
 
 
E/e’が28と高値なLVH
(正常
 

心電図 (ECG)

ECGでは正常洞調律、非特異的ST-T変化
 
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NT-proBNP in cardiac infiltrative disease

What is the diagnosis of this case?

診断

 

左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の場合、NT-proBNP値が極めて高く、腎機能が正常で、洞調律であれば、心アミロイドを考えます。

 

この患者は心臓生検と骨髄検査により、原発性心アミロイドーシスの診断が確定しました。

著者の見解

  • 経験豊富な方が読影すれば、心エコー像からアミロイドのヒントが確認できた可能性はありますが、初期診断にアミロイドーシスは含まれていませんでした。

  • 駆出率が正常かつ洞調律で、重大な腎機能障害がない場合、NT-proBNP値が3000 pg/mL超であれば、心アミロイドを考えるべきです。1

  • また、典型的な狭心症胸痛でCAG像が正常の場合、LVEDPの測定が推奨されます。

  • LVEDPの上昇、NT-proBNPの極高値、心筋トロポニンの軽度上昇があり、腎不全の所見がなければ、CAG像が正常な心アミロイドーシスの診断の手がかりとなる可能性があります。

  • この患者の診断は、心臓生検と骨髄検査により原発性心アミロイドーシスであることが確定し、形質細胞疾患に対する化学療法を実施しました。

  1. G. Merlini et al, Leukemia (2016) 30, 1979–1986

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