塩崎 正幸先生
順天堂大学医学部附属練馬病院 循環器内科医
 

0h/1hアルゴリズムを用いた患者の事例紹介

KEY TAKEAWAYS

  • 症例1:右脚ブロックの既往があり、心電図の解釈が困難な高齢患者に0h/1hアルゴリズムを用いたところ、高感度トロポニンT(hs TnT)が高値となり、急性心筋梗塞(AMI)と三枝病変を正確に検出しました。
  • 症例2:診察や心電図で確定できなかった際にも、hs TnTを用いた0h/1hアルゴリズムによりAMIと診断することができました。アルゴリズムでルールインとなった場合、慎重な対応をする必要があります。
  • 症例3:胸痛患者を経過観察群に分類し、詳細な検査(カテーテル検査)をしたところ、後に三枝病変が認められました。適切な治療後は、左室壁運動異常(アシナジー)は認められませんでした。

症例1:ルールイン。80歳女性

胸痛に苦しみ、繰り返し救急外来を受診していた80歳女性。常に「ただの術後の痛み」や「心因性の痛み」と説明されていました。彼女は私の夜勤中に、救急外来を再び受診しました。10年に及ぶ右脚ブロックの既往があるため、心電図データを解釈するのに苦労しました。そこで0h/1hアルゴリズムを施行しました。受診時のトロポニン値は52でしたが、1時間後に131に上昇したため、ルールインと判定しました。実際、問診時には判断するのは難しく、患者に電話して再受診をお願いし、準緊急でカテーテル検査を実施しました。結果:右冠動脈(RCA)#1:90%、左前下行枝(LAD)#6:90%、左回旋枝(LCX)#11:90%。これにより三枝病変が明確に示されました。1年にわたり悩み続けていた患者と家族は、病気がはっきり分かったことに感謝していました。

症例2:ルールイン。心電図と診察で確定できなかったものの、0h/1hアルゴリズムによりAMIが明らかになった症例

これはおそらく、患者によって経験している痛みを説明する方法が異なることに原因があります。1つ例を挙げます。ある新人レジデントが受け持った患者に0h/1hアルゴリズムを用いて「ルールイン」と判定し、当直の循環器内科医に意見を求めました。この心臓カテーテル治療医は、心電図データを見て、患者の胸痛の説明を考慮し、自身の経験から虚血性心疾患の可能性は低いと結論付けました。しかし、帰宅させてからわずか半日後に、その患者はST上昇型心筋梗塞で救急治療室に再搬送されました。このことからわかるのは、アルゴリズムによる「ルールイン」判定は、必ずしも急性冠症候群(ACS)を示していなくても、真剣に受け止めるべきであるということです。

症例3:経過観察群。57歳男性

2日前に胸痛を経験した57歳男性。再び痛みを感じたため、受診しました。高感度トロポニン値は、受診時に19で、1時間後に23に上昇しました。この結果を受けて「経過観察」群としました。適切な処方を行い、2日後にカテーテル検査を実施しました。結果:RCA#2; 99%、LAD#6; 90%、LCX#11; 90%、三枝病変。治療後も左室壁運動は正常なままで、合併症は認められませんでした。

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