慢性心不全と急性腎障害を有する患者さんでは、どのようにヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)ガイド下治療を用い、どのようにNT-proBNPの上昇を予測すべきでしょうか?

Dr Sim:シンガポールでは、救急外来の患者さんの受け入れ時にはほとんどの場合、NT-proBNPを測定します。 救急医はNT-proBNP測定について、結果を迅速に得られるよう、かなり積極的に依頼します。

肺炎や急性腎障害がある場合、これらは確実にNT-proBNPの結果に影響を及ぼします。それでもなお、NT-proBNPの測定により患者さんを常時評価する上で多くの情報が得られるため、当該測定は依然として有用です。

Dr Januzzi: 急性腎障害は急性の体液過剰を引き起こし、NT-proBNP値の上昇をもたらす可能性があるため複雑です。また、腎機能の悪化により毒素が蓄積して心筋に負荷がかかりトロポニン上昇を引き起こしたり、心筋機能障害からNT-proBNPの上昇を来す可能性があります。さらに、腎臓はNT-proBNPのクリアランスの約20~25%を担っています。急性腎障害を来した患者では、NT-proBNPが上昇します。この上昇は、予後を十分に予測するものです。急性腎障害患者の中にはNT-proBNPが上昇しない方もいますが、こうした結果が得られた場合は、むしろ安心できます。

サクビトリル/バルサルタンおよびSGLT2阻害薬の使用に関連して腎機能が改善することに加え、DAPA-CKD試験のデータでは、予後をさらに改善し、腎臓を保護するために利用できるいくつかのツールが提示されました。急性腎障害患者を対象としたCANVAS試験では、NT-proBNPに加えて、IGF結合タンパク質-7(IGFBP-7)を含む他のバイオマーカーも検討されました。 IGFBP-7は、インスリン様成長因子結合タンパク質ファミリーに属するバイオマーカーです。ただし、その主な役割は、線維症の組織リモデリングです。また、心不全だけでなく、腎疾患とも関連しています。IGFBP-7はCANVAS試験で検討した結果、心不全の発症のみならず、慢性腎臓病の進行の極めて強力な予測因子であることが判明しています。

サクビトリル/バルサルタンにより、NT-proBNPは最大レベルで低下します。これはおそらく、これらの薬剤が他のナトリウム利尿ペプチド(おそらくANP)を増大させる作用機序を有することから、結果的にNT-proBNPが低下するためです。このほか、NT-proBNPを劇的に低下させる心不全の治療法に、心臓再同調療法(CRT)があります。 サクビトリル/バルサルタンとCRTは、NT-proBNPを極めて大幅に低下させます。

 

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