Dr Dong-Hyuk Cho
Cardiologist/Assistant Professor Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, Yonsei University Wonju College of Medicine, Korea
 

韓国の臨床症例:心筋症におけるNT-proBNP値

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CTL-ProfCho-Case-Study-Oct-Asset-1

58歳女性

主な徴候および症状

労作性呼吸困難(NYHA IIII、1ヵ月で進行)、起坐呼吸 (+)

既往歴

高血圧 (-) 糖尿病 (-)
投薬歴なし (-)

診察

急激な状態悪化
BMI 21.8
血圧 135/85 mmHg
バイタルサイン
体温 36.2°C
心拍数 120/min 規則的
呼吸数 22/min
心雑音または過剰心音の聴取なし
断続性ラ音の聴取なし
下肢の圧痕浮腫(G2)
その他に特記すべき身体所見なし

臨床検査結果

CBC 14.0 g/dL
WBC 8580/mcL
血小板数 344,000/mcL
電解質:
ナトリウム 142 mmol/L
カリウム 3.7 mmol/L
クロール 104 mmol/L
BUN/Cr 17.4/0.81 mg/dL
AST/ALT 41/40 IU/L
NT-proBNP 3490 pg/mL

経胸壁心エコー(TTE)およびMRI画像

LVEF 25% 心臓MRIで心筋線維症を示唆する心筋中層の遅延造影(LGE)

 

冠動脈造影(CAG)

閉塞性冠動脈疾患は観察されず
 
 

胸部X線(CXR)

心拡大
 

心電図 (ECG)

洞性頻脈
  入院時 1回目の外来時
(2週目)
2回目の外来時
(4週目)
3回目の外来時
(8週目)
4回目の外来時
(16週目)
バイタルサイン 血圧
(mm/Hg)/心拍数(/min)
135/85-120 137/84-103 119/77-73 113/72-75 125/75-70
 
電解質 – Na/K(mmol/L)
BUN/Cr
(mg/dL)
142-3.7
17.4/0.81
139-4.3
17.0/0.82
138-4.5
16.7/0.70
138-4.6
13.7/0.65
139-4.8
19.2/0.95
 
症状 NYHA III NYHA II NYHA II NYHA I
めまい
NYHA I
 
投薬 ペリンドプリル 4 mg
カルベジロール 3.125 mg 1日2回
フロセミド 20 mg 1日2回
スピロノラクトン 12.5 mg 1日2回
ペリンドプリル投与中止
エンレスト 50 mg 1日2回
イバブラジン 5 mg 1日2回
エンレスト 100 mg 1日2回
フロセミド 20 mg 1日1回
スピロノラクトン 12.5 mg 1日1回
エンレスト 50 mg 1日2回 変更なし
 
   
駆出率が低下した心不全(HFrEF)の急性増悪の治療+
神経ホルモン遮断薬の併用
  ARNI/イバブラジンによる治療
9
Destabilized HF-I

What is the diagnosis of this case?

診断

 

特発性拡張型心筋症

 

TTEでの左室内腔の拡大および左室壁運動のびまん性低下、ならびに心臓MRIでの心筋中層の遅延造影(LGE)に基づき、拡張型心筋症と診断されました。

 

2週間のガイドラインに基づく薬物治療(GDMT)後の1回目の外来時も、NT-proBNP値は依然として高値でした。

著者の見解

新たに不安定な心不全になった外来患者では、NT-proBNP値の変化を連続でモニタリングすることで臨床評価においてより優れた予後情報を得ることができます(特に1回目の外来時)。1 NT-proBNPはネプリライシン阻害薬の基質ではないため、ARNI使用中の患者の臨床反応を評価するのに有用です。

  1. Domingo A. Pascual-Figal. et al, European Heart Journal, Volume 29, Issue 8, April 2008, Pages 1011–1018
CTL-ProfCho-Case-Study-Oct-Asset-1

59歳男性

主な徴候および症状

NYHA IVの呼吸困難およびPND(1ヵ月で進行)

既往歴

高血圧 (-) 糖尿病 (-)
昨年、急性心筋梗塞(pLAD)による入院歴あり
アスピリン 100 mg、クロピドグレル 75  mg、ロスバスタチン 10 mgの投薬歴あり
NYHA II~IIIの呼吸困難がありNYHA IVに悪化(横になることができない)

診察

急激な状態悪化
BMI 18.5
血圧 88/66 mmHg
バイタルサイン
体温 36.2°C
心拍数 104/min 規則的
呼吸数 22/min
頸静脈怒張
心雑音または過剰心音の聴取なし
肺中部から下部に断続性ラ音聴取
下肢の圧痕浮腫(G1)
その他に特記すべき身体所見なし

臨床検査結果

CBC 15.9 g/dL
WBC 5170/mcL
血小板数 302,000/mcL
電解質:Na/K/Cl 137/5.3/101 mmol/L
BUN/Cr 29.7/1.22 mg/dL
AST/ALT 45/24 IU/L
C反応性タンパク (CRP) NT-proBNP 4010 pg/mL

胸部X線(CXR)

多発性肺硬変、
左胸水
 
処置前 ドブタミンを投与し
利尿薬によるボリューム調節後、
肺うっ血が
大幅に改善。

経胸壁心エコー(TTE)

LVEF 20%
、心尖部の運動消失
  入院時 1回目の外来時
(2週目)
2回目の外来時
(4週目)
3回目の外来時
(8週目)
4回目の外来時
(16週目)
バイタルサイン 血圧
(mm/Hg)/心拍数(/min)
93/67-95 95/63-92 92/67-65 92/55-62 93/59-65
 
電解質 – Na/K(mmol/L)
BUN/Cr
(mg/dL)
142-3.4
11.4-0.70
143-4.1
16.2-0.80
138-4.5
21.2-0.94
143-4.2
17.9-1.14
137-4.4
23.3-1.23
 
症状 NYHA III NYHA II NYHA II NYHA I NYHA I
 
投薬 ビソプロロール 1.25 mg 1日1回
フロセミド 20 mg 1日2回
スピロノラクトン 12.5 mg 1日1回
ビソプロロール 1.25 mg 1日1回
フロセミド 20 mg 1日2回
スピロノラクトン 12.5 mg 1日1回
カンデサルタン 2 mg
ビソプロロール 1.25 mg 1日1回
イバブラジン 5 mg 1日2回
フロセミド 20 mg 1日1回
スピロノラクトン 12.5 mg 1日1回
カンデサルタン 4 mg
ビソプロロール 1.25 mg 1日1回
イバブラジン 5 mg 1日2回
フロセミド 20 mg 1日1回
スピロノラクトン 12.5 mg 1日1回
カンデサルタン 4 mg
ビソプロロール 1.25 mg 1日1回
イバブラジン 5 mg 1日2回
フロセミド 20 mg 1日1回
スピロノラクトン 12.5 mg 1日1回
 
2
Destabilized HF-II

What is the diagnosis of this case?

診断

 

虚血性心筋症

 

心筋梗塞の既往歴ならびにTTEでの心尖部の運動消失およびLVEF低下に基づき、虚血性心筋症と診断されました。

 

このような悪液質の見られる不安定な患者(BMI 18)では通常、血圧や心拍数が限界付近にあるため、心不全治療薬を漸増するのに信頼性の高いバイオマーカーが必要です。

著者の見解

ICM患者では血圧や心拍数が限界付近にあるものの、ガイドラインに基づく薬物治療(GDMT)がNT-proBNP値に応じて細かく調整されています。 GDMTを適用する際の「ガイド」ツールとしてNT-proBNP値を使用できる可能性があり、これは、高値が持続する患者において、積極的に治療を調節することを促します。1

  1. Current Heart Failure Reports volume 15, pages 37–43 (2018)

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